日本からアメリカ西海岸へは、飛行機で約10時間、東海岸へは約13時間の旅になります。太平洋を渡った海の先、アメリカと日本の時差はどのくらいになるのでしょうか?今回はこの時差について書いていきます。
世界における日本の位置
日本は極東(きょくとう・Far East)とも呼ばれるように、ヨーロッパやアメリカから見ると地図の東側に位置します。日本で見かける平面の世界地図では、日本が中心で東にアメリカ、西にヨーロッパがありますが、これが世界標準という訳ではないんですね。地球儀はぐるぐる回せますが、平面(2D)の世界地図はそれぞれの国によって変わってきます。
19世紀には、世界の3分の2以上の船が「グリニッジ子午線(しごせん)」を基準とした海図を使っていたそうです。
グリニッジ子午線は経度0度近くの場所にあり、一般的にはこの場所を基準にした地図が使われていました。イギリスロンドン郊外にグリニッジ天文台があります。グリニッジ子午線とは、「グリニッジ天文台の中心を通る子午線」です。
つまり、ロンドン近郊を世界地図の中央と考えることになります。日本はそうなると、かなり端(極東)に位置していることになりますよね。しかし現在では、「IERS基準子午線」と呼ばれるものが国際基準子午線(経度0度)として管理されています。現在の学校教育ではこのIERS基準子午線が教科書に登場してくるのかな?
詳しい説明はここでは省略します。
世界の時差がどんな風に分かれているのか、ウィキペディアから拝借したこの地図を見てみてましょう。
上の方に0(ゼロ)の数字が書いてあるところを下にたどったところが、イギリスロンドン郊外のグリニッジです。
日本は、地図のかなり右側、縦の列(東)+9の列に位置しています。この地図は時間帯別に色分けされてるので、世界の時差を考えるうえで、とても見やすいですね!日本は色がちょっとうすいですが。
世界の基準時刻UTC
世界各国の時間帯をあらわすときに、「UTC ◯◯」といったいい回しがでてきます。◯の中には数字が入ります。「UTC」はCoordinated Universal Time(協定世界時)の略。協定世界時とは世界の基準時刻です。
今回の記事は、やたらむずかしい言葉が並びます。
時間帯は地図をみてわかる通り、縦軸(経度)で分けられているので、東西に行くにしたがって時間帯が変わりますが、南北(緯度)が同じ場所は基本的に同じ時間帯となります。
例えば北欧のフィンランドと南アフリカは、南北ほぼ反対側に位置していますが、同じ時間帯になります。
ちなみにこの時間帯は「標準時間」とか「タイムゾーン(time zone)」とも呼ばれます。
日本の時間帯は?
日本は先ほどの地図でいうと+9のところにありましたね。UTCで表すと、日本は「UTC+9」という表現ができます。「基準時刻ぷらす9」って感じですね。日本は小さな島国なので1つの時間帯におさまりますが、国によっては1つの国で複数の時間帯にまたがるところもあります。
アメリカの時間帯は?
アメリカは東西に広いため、9つの時間帯に分かれます。無人の島を含めると、合計で11の時間帯があるそうです。ただし一般的に使われてるのは次の6つの時間帯です。
- ハワイ時間帯(HST/Hawaian Time UTC-10)
- アラスカ時間帯(AKST/Alaska Standard Time UTC-9)
- 太平洋時間(PST/Pacific Standard Time UTC-8)
- 山岳部時間(MST/Mountain Standard Time UTC-7)
- 中部時間(CST/Central Standard Time UTC-6)
- 東部時間 (EST/Eastern Standard Time UTC-5)
ちなみに日付変更線とは?
国際日付変更線は、地球上で「経度180度近く」のところで線引きされています。場所的には、太平洋オセアニア近くの島々のところど真ん中。
先ほどの地図でいうと「-12」と「+12」の所に日付変更線が引かれています。ここをまたぐと、時間は同じなのに日付が1日変わります。不思議な感じですね!
例えば太平洋ポリネシアに浮かぶサモアとトンガ。この2つの国の距離は約887kmで、東京から北海道の距離とほぼ同じですが、2つの国の間に日付変更線があるため、国を越えると「同じような時間」なのに「日付が変わり」ます。
2つの国へ旅行に行ったら、フライト時間を間違えてしまいそうです。
ちなみに国際日付変更線、まっすぐではありません。
アメリカ主要都市の時間帯と日本との時差
アメリカ主要都市がどの時間帯に位置してるのか、もう少しくわしくみてみます。
なお、日本はアメリカより時間が先に進んでいます。
- ハワイ時間帯(HST/Hawaian Time UTC-10)
- アラスカ時間帯(AKST/Alaska Standard Time UTC-9)
- 太平洋時間(PST/Pacific Standard Time UTC-8)
- 山岳部時間(MST/Mountain Standard Time UTC-7)
- 中部時間(CST/Central Standard Time UTC-6)
- 東部時間 (EST/Eastern Standard Time UTC-5)
主要都市:ホノルル
日本との時差は19時間。日本が午前9時の時、ハワイは前日の午後2時
ハワイはサマータイムがありません。
日本と距離的には近いですが、日付変更線を越えるため、時差的にはアメリカの中で一番広がります。
主要都市:アンカレッジ
日本との時差は18時間。日本が午前9時の時、前日の午後3時
主要都市:ロサンゼルス・サンフランシスコ・ラスベガス・シアトル・ポートランド
日本との時差は17時間。日本が午前9時の時、前日の午後4時
主要都市:ソルトレイクシティ・フェニックス・デンバー
日本との時差は16時間。日本が午前9時の時、前日の午後5時
主要都市:シカゴ・ダラス・ヒューストン・ミネアポリス
日本との時差は15時間。日本が午前9時の時、前日の午後6時
五大湖の西側、中部地帯の時間です。
主要都市:ニューヨーク・ボストン・ワシントン・マイアミ・アトランタ・デトロイト
日本との時差は14時間。日本が午前9時の時、前日の午後7時
米国大陸の中では一番に日が昇る地域。五大湖の東側やフロリダもこの時間帯に位置します。日本との時差も西海岸に比べ近いです。
これでアメリカにいる上司にも、真夜中に電話することなくすみそうですね!
ところでサマータイムとは?
米国は、ハワイ州とアリゾナ州をのぞくほとんどの地域で、サマータイム(夏時間)を取り入れています。サマータイムが始まると、1時間時計を動かさなければなりません。
最近ではスマホが自動的に時間を設定してくれるので、「今何時になるんだったっけ?」と切り替え時にいちいち考えることはありませんが、なじみのない文化のため、「なんでそんな面倒なことをしてるんだろうか」と最初は気になったものです。
サマータイムは「Daylight Saving」とも呼ばれます。
夏になると日が長くなるので、その明るさを有効活用しようという訳です。夏には時計の針を1時間前に動かすことで、なるべく多くの太陽(自然光)を利用できるようになります。秋になると時計の針を1時間後ろに動かし、元の時間(標準時間)に戻します。切り替え時には朝が明るくなり、夕方早いうちに暗くなります。
2017年は3月の第2週目と11月第1週目の夜中に、時間の切り替えが行われましたが、年度によって変更となる場合があるようです。
いつ時間が変わるのか、あまりみんな覚えていません。気づかない人(というかあまり気にしていない)人もいます。
冬の切り替えのときは「今回は1時間長く寝れて得した気分!」とか、夏には「今回は1時間早く起きないと…1時間失った」と私は毎回勝手に思っています。結局はプラスマイナスゼロなんですが。
サマータイム、時計の針を動かすのは1時間だけですが、赤ちゃんがいる人はこの1時間が意外と大きいようです。赤ちゃんが時間をうまく調整できないため、起床と睡眠時間を合わせるのに、1週間くらいかかる子もいるよう。大人は比較的調整しやすいですが、私は前回は時間が変わったあとの1週間はなんとなく体調がすぐれませんでした。
米国内では「サマータイムなくしてもいいのでは?」といった声もあります。ただその歴史を調べてみると、自然光をより多く活用することで経済的な面だけでなく、資源の面からみても節約できるといった意図が、元来あったんです。
サマータイムを取り入れることにこんな歴史が
1784年アメリカ合衆国の政治家・発明家でもあるベンジャミン・フランクリンがフランス「The journal of Paris」の編集者宛てに、こんなエッセイを書いたそうです。
「”An Economical Project of Diminishing the Cost of Light” (電気代を節約するための経済的なプロジェクト)」。
当時キャンドルを使っていたフランス人のために、「夜早く寝て朝早く起きれば、自然光を使えて経済的にも節約できる」といった冗談まじりのエッセイだったようです。このベンジャミン・フランクリンがDaylight Savingを提案した訳ではありませんが、こんな話もありつつときを経て、英国で1908年にDaylight Savingが初めて導入されます。そして1970年代のオイルショックを期に、世界各国で取り入れられるようになってきたそうです。
米国では現在ほとんどの州(アリゾナ州・ハワイ州を除く)で実施されています。
(参考:ウィキペディア(英語))
普段あまり気にせず使っている電気ですが、こんなストーリーを知ると、サマータイムも悪くないと勝手に納得しまうのでした。
まとめ
自然光の活用そして資源の節約。こういった視点でみてみると、深いですね。
ちなみに北西部のシアトルは、夏は夜でもかなり遅くまで明るいです。スターバックスの発祥地でもあるシアトル。人々はコーヒーと本を片手に、ひたすら明るく長い夜(昼)を過ごしてる人が多いようです。
北欧のデンマークやスウェーデンは、家具のクラフトで有名。日照時間の少ない冬を屋内ですごすため、クリエイティブなデザインの家具がうまれたとも言われています。自然光が人間に及ぼす影響は、思ってる以上に大きいような気がします。
アメリカは地域によって時間が違い、日本との時差も大きいのため「現在時刻」がわかりづらいですが、現在はスマホが時間を教えてくれる便利な時代。
「日本との時差って何時間あるの?」と聞かれても答えられませんでしたが、今回の記事のおかげで、日本との時差をようやく覚えられそうです❤